発泡スチロールによる海洋ごみ問題とその対策(その3)

0
    3.発泡スチロール製フロートの経済的廃棄とリサイクル
    発泡スチロール製フロートは,1本4,000円程度の商品です。しかしその廃棄には1本1,000~1,500円ほど処分費用が必要とされます。その理由は,発泡スチロールがポリスチレンビーズを50倍に発泡させたものであるため,原料が容積全体の2%しか含まれておらず, 8割を輸送費が占めることにあります12)。 そこで水産庁の事業では,まず廃棄場所からリサイクル工場までの輸送費の削減を目指し,廃棄地での減容化が検討されました。発泡スチロールの減容方法に は,ボイラーの熱を使って溶かし,インゴットにする熱減容方式,同じくボイラーの熱で気化させ,そのガスを冷却して油として回収する油化方式,溶剤に溶かしてポリスチレンを再生する溶剤減容方式などがあります。各々の方法を検討した結果,まずボイラーを使用する方式では,有資格者が必要であり,そのうち熱 減容方式では分子の劣化が生じるため,ポリスチレン原料としてのマテリアルリサイクルには限界があることがわかりました。また油化方式では,異物除去のた めに高価なフィルターが必要であり,また大量の水分を含んだフロートの気化には,大量の燃料が必要なこともわかりました。さらに溶剤減容方式では,分子の 劣化は起きませんが,容積が大きいため,すべてを溶かすためには時間を要し,大量に処分するためには可燃物である高価な溶剤を大量に保管しなければならな いという問題点があることもわかりました。よって水分や付着生物等の不純物が多く含まれ,大型で毎年大量に発生する廃フロートを短時間で経済的に処分する ためには,製紙工場等のボイラー燃料となるRPF(Refused Paper and Plastic Fuel)原料としてのリサイクルを目指し,廃棄地で粉砕圧縮する方法が採用されることとなりました。現在使用されている発泡スチロール製フロートの簡易粉砕圧縮減容機が(株)エルコムのスチロスブイです。この減容機は,発泡スチロール製フロートを回転歯で粉砕し,スクリューで圧縮ノズルに押し込むことにより,摩擦熱でビーズ内部のガスを抜いて減容する もので,構造的に単純で保守と運用が簡単であり,ボイラーを持たないため,作業者に資格も不要です。また減容機の投入口が大きく,大型フロートをそのまま 投入することができるため,作業し易く,処理スピードも早くなりました。2003年から2012年までの事業では,合計で44,872本(183トン)の廃フロートが処理されています13)。その処理能力は405kg/日であり,1本3.5kgとすると115本/日となりました。またこの減容機は,容積を1/5−1/25に減容することができるため,運送費を節減することができ,熊本県御所浦海域では,粉砕減容,運搬,処分までの処理単価を117円/kg(発電機使用量含む)とすることができました。これは廃フロート1本あたりに換算すると約470円/本となり,未減容による処分の場合の約1,610円/本と比較して,大幅な処理費用削減となっています。また御所浦海域では,現在,魚類養殖生簀が1,000台程度設置さており,1台あたりフロートが32本使用されているとすると,総使用量は32,000本と推定されます。フロートの耐久年数が5〜10年とすると,毎年3,200〜6,400本の廃フロートの発生が予想されため,その処理には,毎年この減容機を使用しても1~2ヶ月を要することになります。一度に2,000本以上の廃フロートが発生する場合,圧縮減容機を購入して減容処理後,運搬する方法が最も経済的である12)ことから,御所浦のような大量の発泡スチロール製フロートを使用する海面養殖地域では,この圧縮減容機を購入し,毎年処理を進めることが効果的と言えます。 なおこれまで,減容化されたフロートは,そのままではカロリーが高すぎるため,カロリーが低い古紙と混ぜて石炭と同じカロリーに調整されたRPFとして製紙工場のボイラーの石炭の代替え燃料として利用されてきました。しかし現在では,発泡スチロールのみで固形燃料を作り,重油ボイラーで燃焼させる方法も検討されています。

    この記事のトラックバックURL
    トラックバック

    calendar

    S M T W T F S
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    282930    
    << April 2019 >>

    selected entries

    categories

    archives

    links

    profile

    search this site.

    others