発泡スチロールによる海洋ごみ問題とその対策(その1)

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    1.発泡スチロール破片による海洋ごみ問題
     発泡スチロールは,軽く安価であり,対衝撃性が高く保冷性を有し,形成も容易なことから,梱包資材や断熱材として主に使用されているプラスチックです。2011年の日本における発泡スチロール製品の生産量は15万トンであり,その56%を魚箱が占めます1)。しかし魚箱は水揚げ場所から市場・販売店等への輸送時に使用され,各市場にはリサイクル施設があり処分されるため,海岸に漂着するものはほとんどありません2)。一方で発泡スチロールの破片は,海岸漂着ごみのワースト3の品目です2)。藤枝ら3)が1997年から九州南部の海岸において調査した結果,海岸に漂着散乱する微小プラスチックの92.6%を発泡スチロール破片が占め,その91.0%が0.3〜4.0mmという微細物であることがわかりました。
     発泡スチロールの軽く安価で形成が容易という特徴は,海面での浮力体としても有効な機能であり,漁業用ブイだけでなく,海面魚類養殖生簀,カキ養殖筏,浮き桟橋などの浮力体としても多用されているという点です。またそれらを大量に使用する地域では,破片化防止のカバーをせずに防舷材や係留ブイ等に再利用されています。しかし発泡スチロール製品は,型枠内でポリスチレンビーズを50倍に発泡させて形成したものであるため,ビーズ間の結合が弱く,外部からの衝撃により簡単にビーズが剥離するという欠点を持ちます。しかし,もしこのような欠点を持つ製品が,海岸等に無造作に積み上げられ,台風等の強風によって海洋に流出した場合,海岸に漂着後,大量の破片を生むことになります。またカバー等をせずに海面で使用した場合も,船舶等の擦れや紫外線による劣化,生物による穿孔によってビーズが剥離し,大量の破片が発生することになります。参照  
     そこで藤枝ら4)は,この破片の発生原因を探るため,1997−1998年,鹿児島湾において海面魚類養殖生簀の浮力体として使用される発泡スチロール製フロートの漂着分布と,港内でプレジャーボートの防舷材や係留ブイとして再利用されている同フロート数の調査を実施しました。その結果,発泡スチロール製フロートは,約300kmの鹿児島湾海岸に3,043個が漂着し,4,856個が港内で破片化防止のカバーをせずに小型船舶の防舷材等として使用されていることがわかりました。またこの廃フロートは,鹿児島湾の東側(大隅半島側)に大量に漂着しており,破片の漂着密度の分布とも一致しています3)。この海域は,鹿児島湾内でも特に海面養殖業が盛んな海域であることから,藤枝ら4)は,海岸に漂着散乱する発泡スチロール破片の原因は,海面養殖漁業における発泡スチロール製フロートの不適切な管理による流出や海岸での漂着後の放置,さらには海面での不適切な使用によって生じると結論つけました。
     日本フォームスチレン工業会5)の集計によると,発泡スチロール製フロートの生産量は,発泡スチロール総生産量の0.3%にあたる年間約500トン(155,000個)であり,都道府県別では,東日本に比べ西日本で多く生産されています。藤枝ら6)が2004年から2006年に日本周辺30海岸で発泡スチロール破片の漂着密度を調査した結果,西日本で漂着密度が高いことがわかりました。特にカキ養殖が盛んな広島湾7)や伊勢湾鳥羽市周辺海域8),魚類養殖が盛んな鹿児島湾3)で漂着密度が高くなっています。しかし最も漂着密度が高かったのは,長崎県対馬であり,ここでは2.3×106個/m2にも達しました6)。これは対岸の韓国慶尚南道巨済市や統営市のカキ養殖海域から流出したフロートの大量漂着が原因と考えられます。よって発泡スチロール破片対策には,国内の海面養殖漁業における問題と海外からの越境ごみ問題の二つの対応が必要と言えます。

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