着任後の教育・研究に対する抱負

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    研究室を掃除していたら23年前に書いた転職の際の書類が出てきました。
    熊本県立水産高校から始まった私のキャリアですが,ここには鹿児島大学に転職する際の若い思いが溢れています。
    98の一太郎で連続紙に打った文章なので,次に見つけることはできないでしょう。ここに記して保存しておきます。
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    「着任後の教育・研究に対する抱負」
                   藤 枝  繁
     太平洋から天草灘。美しい海と豊富な水産資源,そして未来の水産界をになう若者たちとの出会いの日々。天草での1年間で私は,力のある海には力のある資源と若者が育つことを学んだ。
     次々と続く遠洋漁業からの撤退,資源枯渇の影響は,この天草の水産高校にも慢性的な定員割れという形で押し寄せ,校名変更,水産科縮小が余儀なくされた。しかし、卒業生たちはこのような時代の中にあっても、その波に飲まれることなく九州沿岸や東海大陸棚を対象とした天草の漁業に従事していく。私はここに水産国日本の進むべき未来像があると考える。この素晴らしい海では、上層,中層,底層部を利用する漁業が同一時期に同一水面でそれぞれ個別に成立し,加えて季節により来遊して来る魚群も変わる。さらに水面は区画することも分割することもできない特性を持つ。このように海の漁業利用は三次元であり,またそこに生息する魚が非定住性である以上,人間が魚をすべて管理することは不可能である。たとえ今後科学が進歩しても、我々は海の持つ莫大なエネルギーに魚を託し続けなければならい。そこで私は,未来の地球環境に影響を与えることなく三次元の海の有効かつ効率的に利用して行くために,人間が作業可能な海上からの海の利用方法を見つける研究に挑戦していきたい。
     それと同時に,私には海を切り開く水産人育成のための航海術の指導という任務もある。そのためにも自分自身,航海士として航海術の錬磨に力を注がなくてはならい。
     最後に再び太平洋に戻ることになるが,広く深いこの海をよく知り,「未来を見通せる眼」と「未来を切り開く勇気」を持って海のエネルギーを大いに利用し,鹿児島大学水産学部が,これからも南の水産研究の総合的・機能的研究・教育機関として位置付けていけるよう研究・教育に努力して行きたい。
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     今読めば何だか抽象的な抱負ですね。これは私が専攻科を卒業してすぐ熊本県の教員となったため,大学に戻ってもこれからどのような研究をするか具体的な方向性を持っていなかったためです。その後,水中音響学のうち,パッシブソナーに関する研究をすることとなりましたが,学位論文を提出後,すぐに海ごみと出会ったため,現在の専門は漂着物学です。これまで航海学,水中音響学の研究に始まり,航海士さらには水産科教育法といった教育関係を担当しながら,海ごみに関する研究と社会的活動を続けてきましたが,今思えばこの抱負にあるように,私の進む道は「海の力を感じること」という抽象的なものだったのかもしれません。この間,いずれも素晴らしい人と出会うことができ,いい経験となりました。
     その後,専攻科の廃止,航海学の縮小,練習船の減船,ボランティア論の終了,水産教員養成課程の廃止と,これまで担当してきたものの多くが終了してしまいました。そう言えば熊本県立水産高校も私が去った翌月に校名が変更されましたね。「未来を見通せる眼」と「未来を切り開く勇気」を備えること。社会人一年目の抱負でした。

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