かごしま丸遠洋航海報告(最終回)/調査結果概要

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     帰ってから2ヶ月が経ちました。これまで9回にわたって報告してきました「かごしま丸遠洋航海報告」もようやく最終回です。今回は調査結果を図を使って報告します。

     まずどのようなものが,どのような状態で漂流してるのでしょうか。


    環境省の試算では,倒壊家屋のがれきが主であるとされていますが,実際洋上では木質系の漂流物(柱,壁,床,倒木など)はほとんど発見できませんでした。多くはプラスチックであり,これまで(震災以前)から漂流し続けるプラスチックに,新たに津波でプラスチックが供給された形となっているようです。また調査海域の漂流物の漂流状態は,環境省が主に流れていると想定している海面下:海面上=1:1の標準漂流物(上図ではB半没)の割合は2割にしか達しませんでした。

     代表的な漂流物を下に示します。

    残念ながら,海面で発見された漂流物は,普段から海岸で見られるものであり,津波起因漂流物であるかどうかの判断ができません。ブイでは台湾や中国のものも流れており,日本を含めた東アジアから流出している通常の漂流物を混ざってしまっているのが現状です。

     次に漂流密度をハワイ大学IPRCのマキシメンコ博士らによる漂流シミュレーションと比較します。赤がかごしま丸の航跡,青のバブルが目視調査で得られた漂流物の総密度(個/km^2),紫が風の影響を受けない津波起因漂流物のシミュレーション結果です。


     北緯32°,東経130°から西経160°の間で密度が高く,最大で5個/km^2となりました。一方,ハワイからの帰路北緯20°から25°の間では,0.2個/km^2以下となりました。この5個/km^2という密度は,Shiomoto & Kameda(2005)の日本近海の最大値3個/km^2よりも高い値です。またこの5個/km^2という密度は,10kt(18km/h)で走る船のブリッジから両側100m(計200m)の幅に3分間で1個発見される密度です。ちなみに瀬戸内海の500個/km^2は,10kt(18km/h)で走る船のブリッジから片側10mの幅に40秒間に1個の密度とかなりの高密度です。すなわち瀬戸内海では漂流物がかたまって流れているといえます。
     よってこの数値から北太平洋中央部では,母島沖で発見された漂流物の潮目のような塊になって流れているのではなく,かなり広域に拡散していると言えます。

     一方,今回発見されたプラスチックの行く末であるプラスチックの微小破片も,ほぼすべての地点で採取され,太平洋の中央部で高い値を示しました。最大値13万個/km^2は瀬戸内海の平均値の1/2です。瀬戸内海と違い発泡スチロールの破片がほどんど見られないのが北太平洋の特徴です。今後この微小物が増えることが心配です。


     海洋におけるプラスチック漂流物は,長期間の漂流で劣化して破片化します。津波起因のプラスチック漂流物は,北太平洋の漂流物量を増加させただけでなく,今後破片化進行することにより,より広域に拡散し,より小型の野生生物への影響を多発化する可能性があります。ただし,震災後も日本からごみは海洋に流出しつづけています。津波による漂流物だけでなくこれからも,また過去に流出したごみに対しても私たちは責任を持たねばなりません。

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